はじめに
□ なぜ経絡治療か ・・・・・経絡治療について
鍼治療は現在、様々な考え方や方法があり、それぞれのやり方で、実績をあげ、多くの人に貢献しています。又その反面かなりいかがわしいと言わざるを得ない治療法もあることは事実です。
経絡治療という言葉の印象から、解らない、古臭い、迷信だと想像される方もいらっしゃるでしょう。また俗に脈診が解るのには最低10年はかかると言われており、そんな悠長な事は言っていられないと考えられる方もおられるでしょう。
現在、西洋医学は日々、刻々と新しい発見がなされ、治療法が発見され進歩しています。一部では鍼灸もそれに従うべきだという考え方も有ります。
しかし、我々が今日、東洋医学、鍼灸の存在を知り、実際に治療に関わる事ができるのは、2000年程前に書かれたと言われる古典「黄帝内経素問・霊数」「難経」等が残っていたからと言えます。
その内容は哲学から生理、治療法、養生法に至るまで多岐にわたっています。今では現代生活に一致しない部分も多くあるかと思います。
しかし、東洋医学、鍼治療の考え方は、その当時の哲学や考え方に則り、整理され、共通の体系としての治療法に発展してきたものです。解釈すると、その考え方を使うと、治療するのに最も都合が良かったと言う事に他ならないと思います。その理論は陰陽理論でなくても、AB理論でも構わないのです。
もしこの哲学や概念から離れたならば、それは鍼治療とは言えるかも知れませんが、東洋医学と呼ぶにはふさわしくないでしょう。
古典に書かれている考え方は、臨床を考える上での、唯一の共通言語となっていたと言っても過言では無いでしょう。もしそれが無ければ、その時代その時代により、各個人により、それぞれがばらばらになり、現代まで残る事はとても難しかったであろうと考えます。
我々は後世までこの優れた治療法を残すためにも、その共通言語である古典をないがしろにしてはいけないと考えます。
どのように解釈し、発展させても、その基本的概念、基本理論に沿って、絶えず反芻し、そこから離れなければ、修学者の共通の財産として後々にも伝える事ができると考えています。
経絡治療という呼び方がいいのかどうかは別にして、経絡治療という治療法はこの古典に書かれている概念が一番反映している治療法と言えます。
私たちが、かつて学び始めた頃、社会的背景も加わり、非常に苦労し、何度も挫折感を味わい、諦めそうになりながら続けて来られた方も多いと思います。
私自身も今やっと、おぼろげながら、古典の概念、理論体系を踏まえ、古典をどのように理解すべきか、そして、それらに則った臨床の法則を臨床を通して探究できたように思います。
それを少しでも多くの熱意ある修学者に伝え、特に若い方には、かつての自分の味わったような苦労をなるべく減らすためにも、開かれた勉強の場を作りたいと思っています。
共に学び、切磋琢磨して、更により良い治療を目指したいと考えています。 そして、今後も多くの先輩達や、若い人達から教示いただき、共に学び続けていきたいと思っています。